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真田幸明
日本サッカー協会登録・普及部部長
プロフィール:真田幸明(さなだ ゆきはる)
1959年 東京都生まれ。82年富士写真フイルム鞄社、95年3月まで営業・宣伝業務に携わる。同年4月、日本サッカー協会に転職、事業部長代理。98年に事業部長、2000年に企画部長を経て、2001年7月より現職。2001年FIFAコンフェデレーションズカップではアシスタントトーナメントダイレクターを務めた。 |
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第2回 子どもたちのプレー環境のために 4.1.MON
■中学生にプレーできる環境を
−− 登録数の減少傾向についてお話を伺いたいと思います。問題はどこにあると思われますか。
真田●ひと言では言えません。でも、私が切実に思っているのは、中学生年代の問題です。いま中学校にサッカー部があるのは、全国で63パーセントなんです。ということは、現段階で37パーセントの中学生は、サッカーしたくてもできないということです。63パーセントのなかにも、指導者が何人いるのか。ちゃんとサッカーを指導できる先生が何人いるのかということですよね。統計をとっているわけではないですけれど、かりに7割だとすると、もうそこで、半分以上がちゃんとサッカーしたくてもできないという現実があります。
−− それは中学生世代だけのことなのですか。
真田●小学生世代では、少年団活動から端を発して、いまは少年団だけじゃなくて、サッカーだけのクラブも増えてきています。ほとんどのクラブや少年団が単一小学校単位ではないので、サッカーをやりたい子は基本的には誰でもできている状況に近いのかなと感じています。これも多くのボランティアコーチやクラブ代表者のご努力のおかげです。
−− 小学生のときにサッカーをやっていたけれど、中学生になったらやるところがなくなってしまうということですね。
真田●急に間口が狭まりますね。都市部では、サッカーをやるために受験するという小学6年生の子どももいますよ。通うエリアの公立の中学校にはサッカー部がない。サッカー部があっても指導者がいないところがあるし、いま指導者がいても、公立の先生は転勤してしまうので、サッカー部にはいったはいいが、指導者がいなくなるということもある。いまちょっと熱心にサッカーをしている子の親は、べつにトレセンや選抜じゃないし、ましてやJリーグの選手にさせたいわけじゃないけれど、一生懸命やっているのでサッカーを続けさせてやりたい。となると受験になるんですよ。私立でサッカー部のある学校にね。そして、その受験のために1年くらいサッカーを辞めるゴールデンエイジの子もいますよ。びっくりする話だけれど、本当にあるんですよ。
−− すごい話ですね。高校生世代には問題はないんですか。
真田●今後中学同様の状況になる可能性もあるので予断を許せませんが、今のところ高校は中学よりも良い状況と思っています。また、高校生にもなれば、学校にサッカー部がなくても、大人のクラブにはいることもできるし、意志がしっかりしていれば自分でなんとかやっていけるという考え方もあります。中学生の場合は、そうじゃないんです。まず学校にサッカー部がない限りなかなかできません。私たちの願いは「サッカーをやりたい子は、全国どこにいても等しくできるようにしなければならない」ということです。
■「クラブづくりプロジェクト」の三本柱
−− 具体的は解決策はありますか。
真田●解決策というわけではありませんが、2年ほど前に「クラブづくりプロジェクト」というものを立ち上げました。「クラブができればいいよね」という声があちこちから出てきたのですが、クラブの問題というのは、いろいろなことが絡み合って複雑なんです。それで2000年末に中間報告を出しました。
「中学生年代にプレーできる場を与えよう」
「指導者が指導だけで生活できるような環境をつくろう」
「プレーヤーに等しく公式戦の機会を与えよう」
プロジェクトの目的をこの三本柱に整理したんです。
−− 中学生年代がプレーするためには、クラブが必要だとういうことですね。
真田●これからも学校の部活動が中心になりますし、いまサッカー部がない中学にサッカー部が増えれば・・・とも思いますが、この社会状況では難しいでしょうね。ですから、学校の部活動を補完する意味でも、地域の社会体育のクラブができてほしいんです。簡単なことじゃないことはわかっています。小学生と違って、中学生ともなれば、ちゃんとサッカーやるためには、土日だけじゃだめでしょう。平日の夕方からもやらなくちゃいけない。となると、専従の指導者が必要になってくる。クラブを指導することで、生活ができるような社会の仕組みをつくらなきゃいけない。専従が無理なら、ほかに勤務をされている方がコーチをできる環境、つまり勤務が5時か6時に必ず終われるような仕事につけるという環境をつくらなきゃいけないわけです。
−− 「指導者が指導だけで生活できるような環境をつくろう」というところにリンクしてきますね。
真田●そうですが、それだけじゃありません。夕方から練習するためには、照明が必要です。学校や公園に照明をつけるということになると、行政の問題になってきます。たとえ、行政が照明をつけることを良しとしても、近隣住民の反対がすこしでもあるとできません。お年寄りが、夜の9時までうるさくされちゃかなわないとか、畑の近くでは照明の明るさによって農作物の成長に影響がでるとか・・・。
−− 問題が山積で、なかなかクラブができそうにありませんね。
真田●クラブができたらいいな、というところから、こんな問題やこんな障害があるというところまで、やっとわかってきたという感じです。わかってきたけれど、そのどれもが、私たちが日本サッカー協会の立場だけでできることではない。もしあるとしても、ほんのわずかなんです。
−− それはどういうことですか。
真田●たとえば、私たちが上からアプローチするとします。文部科学省に行って、「学校開放がうまくいっていないんじゃないか」「もっと多くの学校に照明をつけてください」と言うとします。でも、そういう話は国レベルのものではないんです。結局地域行政と話してください、となると思います。とにかく、その地域の方がたが熱意をもって、それぞれの問題に立ち向かっていくことがまず必要なんです。
■スポーツにも「受益者負担」の考え方が必要なとき
−− 具体的にどういう行動が必要になるのでしょうか。
真田●活動している学校に照明をつけたいとします。ひとつのサッカークラブが訴えても動かないものでも、地域のほかのクラブとネットワークを組んで、サッカーだけじゃなくて野球のチームでもいいんです、いくつかのクラブが集まれば、大きな意見になります。近隣のお年寄りも、この地域のたくさんの子どもたちのために役立つんだということになれば、納得してもらえるかもしれません。照明がついて明るくなったので夜の犯罪が減ったとか、地域の消防訓練などがやりやすくなったとか、そういう例もあります。たいへんなことかもしれませんが、サッカーに携わる方が、できるだけ大きな視野で身近な問題を解決していってほしいんです。実際、がんばってこられた方がいるから、中学生年代のクラブは徐々に増えてきています。しかし、クラブを運営していく上でもうひとつ大きな問題があります。
−− それは何ですか。
真田●運営費用の問題です。日本人は、長い間学校体育とか企業での福利厚生でしかスポーツをやってこなかった。「受益者負担」という考え方が少ないんです。クラブを運営していくためには、照明をつけたら電気代がかかる、指導者には指導料を払わなければならない。こういう当たり前のことが、いまはまだあまり受け入れられていない。日本人のスポーツ観が変わらなきゃいけない。日本サッカー協会が、きょうあすにできることではありません。でも、そういうムーブメントを少しずつ端のほうから起こしていかなければいけないと思っています。
−− 文部科学省は「総合型地域スポーツクラブ」ができることによって、地域の住民がスポーツによって幸せになるとうたっています。
真田●そうなることが理想ですね。いちどに総合型はむずかしいかもしれませんが、サッカーだけでも多世代型のクラブだったり、近隣の中学がいっしょになって、A校とB校はサッカー、C校は野球、D校はバレーボールというようにして、D校の生徒がサッカーをやりたければ放課後にA校に行くというようにやりたいスポーツをどこでもやれる環境ができればいいと思います。それが、2002年度から実施される「クラブ申請」制度のひとつの考え方でもあります。(*)
−− それが、登録と普及につながっていくということですね。
真田●とにかく、全国どこで生まれても、どんな世代でも、ハンデなくサッカーができる。そういう環境をつくりたい。そして、皆がレベルに応じた競技会でプレーを楽しめるようにしたい。そのために、いま何をしなければならないか。取り組み始めたところですが、そんなに悠長なことは言っていられないと思っています。2021年に200万人の登録をめざしてがんばりたいと思います。
−− 期待しています。長時間ありがとうございました。
(*)クラブ申請制度
文部科学省の「スポーツ振興基本計画」(総合型地域スポーツクラブ)実施の影響を受け、「クラブ」に対応した制度の必要が生じたため、日本サッカー協会では、これまで年齢によって分かれた種別のチーム単位の登録に加え、「クラブ申請」を受け付けることになった。
それは、2つ以上の複数の異なる種別のチームが同一組織内にあるものを、「クラブ」と認めて競技会の参加資格を見直すというもの。これによって認可された「クラブ」は、第1種の大会に第2種以下の登録選手を、第2種の大会に第3種以下の登録選手を、第3種の大会に第4種の登録選手を、同クラブ内のチーム間であれば移籍手続きなしで出場させることができるようになる。
そして、合同チームの大会出場についても付記されている。
「都道府県サッカー協会内の大会では、その都道府県サッカー協会の裁量により、選手人数が不足しているチーム同士が合同チームを編成し、大会に出場できることとする」
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